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2018年1月21日日曜日

音楽家と「引退」

昨日、元TMネットワークの小室哲哉さんが「引退」を表明されましたね。
僕はリアルタイムで見ていたわけではないのですが、後でこの会見の様子を映像で見て、ものすごい「違和感」を感じました。

どこに感じたのかというと、「小室哲哉という音楽家が引退を表明した」というところ。

彼は、何から引退すると言ったのでしょうか?
そのことに、アマチュアのなんちゃって音楽家(←僕のことです^^;)としてもの凄く・・・ホントにもの凄く、違和感というか「そーじゃないだろ?」という感覚を覚えてしまって、今になってもまだその違和感が消えないので、その事についてここでブログ書きながら考えようと思います。

例えばプロ野球選手が30代後半で「引退表明」という話をしたら?
それは「プロ野球界で野球をプレーして給料をもらうということを辞めます」という意味ですよね?・・・そしてそれは「トップレベルで活躍する野球選手ではなくなる」ということを意味します。
その後、OB会の余興的な野球試合や草野球などで野球を楽しむ事はあるのかもしれませんけれど、それは体力や運動神経の衰えとともにそういう環境に慣れていって、そのレベルの野球を楽しむという意味で、「プロレベルの野球をやる人ではなくなる」という意味に変わりはありません。

引き合いに出して良いのかどうか迷うけど、元サッカー選手の中田英寿さんは「練習が嫌い。けどプロのサッカー選手であるからには、結果を出すために必要だから練習はしなければならない。だから僕は練習をする」というような趣旨のことをお話されていました。

けど、僕の知る限り小室哲哉さんというミュージシャンは、どんなときでももの凄く楽しそうにキーボードやシンセを引いていました。もう30年近く前の話だけどカシオというメーカーから革新的なデジタルシンセが発売になった時、そのシンセのデモ曲を弾いていた時の楽しそうというか「没頭してる感じ」・・・あれはどう見ても「仕事で必要だからやってる」んじゃなくて、「弾くことそのものが楽しい」、だからやってる、という感じにしか見えませんでしたし、最近の彼の音楽活動も、楽しそうに見えていました。(もちろん、売れなきゃいけない、注目されなきゃ意味がないというプレッシャーと水面下で戦っていたのは事実でしょうけれども)

では音楽家の引退とは?
職業として楽曲を作り、職業として演奏をしていた人物がその職業をやめる・・・つまり楽曲を作り演奏することをやめるという事であれば、「引退」という言葉もアリなんだと思います。
けど、日本の音楽シーンのトップレベルの音楽家の方たちに、そういう人っているんでしょうか?
つまり「職業だから曲を作り、職業だから演奏をしているんだ」「キーボードを弾く練習なんて嫌いだけど、必要だから練習してるんだ」という人。

僕の知る限り、僕の知っている音楽家(=プロのミュージシャンで、それで生計を立てている人)さんたちは、例外なく「好きじゃないけど練習して、曲を演奏して、お金を稼ぐために音楽をやっていて、稼げなくなったら音楽をやめてやらなくなるんだ」という人たちではありません。
生きることそのものが音楽であり、寝ても覚めても音楽。
音楽をやめるということは、その人がその人であることをやめるに等しいような、そういうスタンスで臨んでいる方ばかりです。

その頂点とも言うべき人・・・そこへ上り詰めた小室哲哉さん・・・僕は彼も「職業が音楽なんじゃなくて、音楽が人生なんだ」という人であると思っています。
その当の本人が「引退」と言ってしまったら、「小室哲哉であることをやめる」というようなことになってしまうのでは?

マスゴミとかの執拗な追求やゴシップ好きな(ファンでもなんでもない)野次馬たちから逃れるために「公の人」という立場から「退く」という意味で「引退」という言葉を使ったのであれば、理解できます・・・というか、頼むからそうであってほしいと。

一人の例外もなくすべての音楽人がとは望まない。

けれど、一生懸命音楽をやり、(僕自身も含めて)音楽を通じて人と出会って人生を豊かなものにした経験のある人には、どうか「音楽をやめる」なんていう言葉や考えを持ってほしくないものです。
だって、音楽や「得だからやったり」「見返りがないからやめたり」するものではないでしょう?人生のほんの一時でも、その素晴らしさに没頭したことがあるのなら、音楽は「職業音楽人」であれ「趣味で音楽をやる人」であれ、「自分自身を表す、かけがえのない人生そのもの」なはずです。

僕も、一生懸命腕を磨き上を目指しという音楽ライフからは遠ざかってしまったけれど、「音楽をやめた」「バンドをやめた」などと思ったことはありません。

大ファンだったわけじゃない。TMNの曲がすごく好きだったわけでもない。
けれど、あれだけ人から愛される曲を無数に生み出してきて、音楽を愛してやまない人生をこれまで歩んできたのだから、音楽家小室哲哉さんには、ぜひ「音楽をやめる」なんてことに想いを巡らせることなんてないよう、全然関係ないけど全然発言力もないけど、切に願っています。

苦しんでいるようだけど、「音楽を続けていることで救われる」こともきっとこれからあるだろうから。

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